TREATMENT OF OBESITY
肥満(ダイエット)外来について
「痩せたいけれどついつい食べ過ぎてしまう」「自己流ダイエットではすぐリバウンドしてしまう」「何を始めたら良いのかわからない」
―そんな悩みを抱えたり、ダイエットを諦めかけている方も多いのではないでしょうか。
当院では、食事や運動の指導に加え、薬物療法を取り入れた肥満(ダイエット)外来を開設しました。
患者様一人ひとりに寄り添い、医師・看護師・管理栄養士が無理なく続けられる減量プログラムを提案いたします。
日常の生活習慣を見直しながら、生涯にわたって肥満を繰り返さないための体質改善をサポートします。
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以下のようなお悩みやご希望がある方は、ぜひお気軽にご相談ください
- 自分では思うように痩せられない
- リバウンドを繰り返してしまう
- 生活習慣病を指摘されたことがある
- 健康診断でメタボリックシンドロームと診断された
- 瘦せたい気持ちはあるが、何をすれば良いかわからない
- 医療的なサポート(食事指導や薬)を受けてみたい
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ご利用前にお読みください
当院の肥満外来は、以下の条件に該当する方が対象です。
- 高度肥満(BMI35以上)の方
- 肥満(BMI25以上)で高血圧、糖尿病、脂質異常症、脂肪肝、高尿酸血症などの生活習慣病を指摘されている方
- 肥満(BMI25以上)でいびきや睡眠時無呼吸症候群を指摘されている方
- 肥満(BMI25以上)で膝痛や腰痛がある方
- 肥満(BMI25以上)でその他の健康障害を伴っている方
患者様が健康的な体を取り戻し、より良い生活を送れるよう全力でサポートいたします。
OBESITY
肥満・肥満症とは
近年、世界的に肥満患者が増加しており、推定では20億人以上が肥満傾向にあるとされています。
日本でも食生活の欧米化に伴い肥満人口が増加しており、肥満(BMIが25kg/㎟以上)の割合は男性で33%、女性で22.3%に達しています。
肥満症とは、糖尿病や高血圧、睡眠時無呼吸症候群など、肥満に関連する複数の健康障害を併発している状態を指します。
特に高度肥満症の方は医学的に減量が必要とされ、健康被害が長期化することで生活の質(QOL)の低下や生涯医療費の増加といった問題が懸念されています。
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肥満のメカニズム
肥満は、脂肪細胞の肥大によって引き起こされます。
人間の体内には白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の2種類が存在しますが、肥満に関係するのは主に白色脂肪細胞です。
食べ過ぎや運動不足などで摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、血液中の中性脂肪が増加します。
この中性脂肪が白色脂肪細胞に取り込まれ、脂肪細胞が肥大化することで肥満が進行します。
通常、健康な成人の白色脂肪細胞の大きさは約70~90㎛ですが、中性脂肪を蓄積すると最大で約130㎛にまで拡大します。
これが肥満のメカニズムです。
白色脂肪細胞の蓄積場所によって、「内臓脂肪」と「皮下脂肪」に分けられます。
内臓脂肪は臓器の周囲に蓄積し、健康障害を引き起こすリスクを高めます。
一方、皮膚のすぐ下に蓄積する皮下脂肪は、主に外見に影響を与える点が特徴です。 -
肥満の原因
次に、肥満の原因について詳しく解説します。
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食べ過ぎや運動不足
肥満の主な原因として、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることが挙げられます。食べ過ぎや運動不足は、当然ながら肥満を引き起こす要因です。
特に、食事の量が多いだけでなく、食べ方の習慣にも注意が必要です。
たとえば、まとめ食いをすると、体が「次にいつ食べられるかわからない」と飢餓状態に陥りやすくなり、必要以上にエネルギーを吸収してしまいます。
また、早食いは満腹感を感じる前に多くの量を食べてしまうため、結果的に過食の原因に。さらに、ながら食いなど注意が散漫な状態で食事をすると、食べた量を認識しにくくなり、無意識のうちに食べ過ぎてしまう可能性があります。 -
遺伝
肥満は、遺伝的要因によっても引き起こされると考えられています。身長に個人差があるのと同じように、体重にも遺伝子の違いが影響を与えることがわかっています。両親が肥満の場合、子どもが肥満になる可能性は高まります。
しかし、遺伝的な要因だけで肥満が決まるわけではありません。
肥満に関連する遺伝子変異を持つ場合、他の人よりも食べ過ぎた際に太りやすい傾向があることが指摘されていますが、それはあくまで傾向に過ぎません。実際には、生活習慣や食事内容が肥満の発症に大きく関わっています。遺伝子変異があるからといって必ず肥満になるわけではなく、適切な生活習慣でリスクを低減することが可能です。
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ABANDONED
肥満を放置するとどうなる?
肥満を放置すると、生活習慣病をはじめ、さまざまな疾患を引き起こすリスクが高まります。
特に内臓脂肪は健康に悪影響を及ぼし、以下のような病気を招く原因となります。
- 2型糖尿病
- 脂質異常症
- 高血圧
- 高尿酸血症
- 痛風
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 脳梗塞
- 睡眠時無呼吸症候群
- 脂肪肝
- 月経異常
- 整形外科疾患
肥満により中性脂肪や悪玉コレステロールが増加し、善玉コレステロールが減少する状態を「脂質異常症」といいます。
この状態は「ドロドロ血液」と呼ばれ、血液の流れを悪化させることで高血圧や心筋梗塞、脳梗塞のリスクを高めます。
また、肥満は2型糖尿病や睡眠時無呼吸症候群といった病気とも密接に関連しています。
肥満をそのままにしておくと、見た目の問題だけでなく、日常生活に影響を与える深刻な健康リスクにつながる恐れがあります。早めの対策が重要です。
TO AVOID BECOMING OBESE
そもそも肥満にならないために
普段から肥満を予防する意識を持つことで、「なかなか痩せられない」「肥満に伴う健康問題に悩む」といった課題を未然に防ぐことができます。
以下に、日常生活で取り入れられる肥満予防のポイントを解説します。
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point 01.
適度な有酸素運動
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肥満予防には、有酸素運動を取り入れることが効果的です。
有酸素運動は酸素を使って脂肪を分解し、エネルギーを作り出すため、体に負担をかけずに脂肪を燃焼させることができます。
ウォーキングやジョギング、ラジオ体操、水泳などが代表的で、1日20分程度を目安に行うと効果的です。
重要なのは無理なく継続することです。以下を意識しましょう。- 自分の体力に合った運動を選ぶ
- 毎日ではなく週3~5回を目安に行う
- 運動中はこまめに水分補給をする
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point 02.
生活習慣の見直し
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生活習慣を整えることも肥満予防に欠かせません。規則正しい生活は体内時計を整え、自律神経の働きを促進します。
自律神経が整うと代謝が向上し、太りにくい体質へとつながります。また、体を冷やさないことも重要です。特に夏場はエアコンの設定温度に注意し、上着やブランケットを活用して冷えを防ぎましょう。
食習慣も見直すべきポイントです。以下を心掛けてください。- 1日3食を規則正しく摂取する
- 早食いやまとめ食いを避ける
- 食事は腹八分目で抑える
- 食べる順番を意識し、先に食物繊維、次にタンパク質、最後に炭水化物を取る
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point 03.
十分な睡眠
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睡眠不足は肥満リスクを高める要因の一つです。
睡眠不足に陥ると、食欲を抑えるホルモン「レプチン」の分泌が減少し、逆に食欲を増進させるホルモン「グレリン」の分泌が増加します。
これにより食欲が高まり、過食を引き起こす可能性があります。
理想的な睡眠時間は個人差がありますが、1日7時間前後が推奨されます。また、睡眠の質を高めるため、以下を心掛けましょう。- 寝る前にカフェインやアルコールを控える
- 暗く静かな環境を整える
- 寝室の温度を快適に保つ
これらを日常生活に取り入れることで、肥満予防だけでなく、健康全般の維持にもつながります。
COMPLICATIONS
睡眠時無呼吸症候群の
合併について
肥満体形になると、首回りのぜい肉が気道を押しつぶしてしまい、寝ている時の呼吸状態が悪化する、「睡眠時無呼吸症候群」になる可能性が高くなります。
体重を減らすだけでなく、様々な合併症が認められないかどうかを調べることが大切であり、特に当院が得意とする睡眠時無呼吸症候群の検査・治療は積極的に行っていく方針としております。
いびき症状があれば、保険適応で検査・治療を行うことが出来ます。
TEST
肥満外来の検査について
肥満治療を始めるにあたり、まず体重や体組成(筋肉量、脂肪量、基礎代謝など)の測定を行います。
また、血液検査を実施し、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群など生活習慣病の有無やその状態を確認します。
必要に応じて以下の検査も他の医療機関に依頼して実施し、肥満に関連する疾患の有無を調べます。
- 心電図
- 動脈硬化検査
- 腹部超音波検査
TREATMENT
肥満外来の治療について
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TREATMENT 01.
食事療法
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肥満外来では、減量を目的とした食事内容や栄養に関する知識を指導します。専門知識を持つ医師や管理栄養士が、ご本人の性格や生活スタイル、食の好み、体格、目標体重などを総合的に考慮し、個々に合わせた食事療法を提案します。
摂取エネルギーの見直し
減量の基本は、消費するエネルギーを摂取エネルギーよりも上回らせることです。
まず、ご自身の身長や日常の活動量から、1日の適正エネルギー量を算出しましょう(主治医から特定のエネルギー指示がある場合は、それを優先してください)。栄養バランスの調整
エネルギー摂取量を減らしすぎたり、特定の食品に偏ると、必要な栄養素が不足することがあります。1日の総エネルギーに対する栄養素のバランスは以下を目標にしましょう。
- たんぱく質:13〜20%
- 脂質:20〜30%
- 炭水化物:50〜65%
特に、ダイエット中はたんぱく質をしっかり摂取し、脂質を控えめにすることがおすすめです。
具体的なプランを立てるには、管理栄養士への相談が効果的です。食べ方のパターンに注意
1日の摂取エネルギーを守っても、食事のタイミングや回数によっては効果が薄れる場合があります。以下を心掛けてください。
- どか食い・むら食い・まとめ食いを避ける
- 夕食は軽めにし、寝る2~3時間前は食べない
- 食事を抜かず、規則正しく摂る
- ゆっくりよく噛んで、早食いを防ぐ
アルコールの適量摂取
アルコールには1gあたり約7kcalのエネルギーがあります。
- ビール(350ml):約150kcal
- 日本酒(1合):約200kcal
- ワイン(グラス1杯):約100kcal
アルコールは中性脂肪を増やし、内臓脂肪蓄積の原因になる可能性があります。また、脂質やたんぱく質を多く含む高カロリーなおつまみを摂ることで、さらに肥満リスクが高まるため注意が必要です。
バランスの取れた食事と適切な食習慣を心掛けることで、健康的な減量を目指しましょう。 -
TREATMENT 02.
運動療法
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運動療法では、患者様それぞれの年齢、体格、基礎疾患の有無、運動経験や習慣を考慮し、最適な運動の種類や頻度、強度を提案します。有酸素運動と筋力トレーニングをバランス良く取り入れることで、代謝の改善と余分な脂肪の燃焼を効率的に行います。
運動療法の目的
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脂肪の燃焼
有酸素運動を主体とし、全身の脂肪を効率よく燃焼します。
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代謝の改善
筋肉量を適度に増やし、脂肪燃焼効率を高めるとともに、基礎代謝を向上させます。
有酸素運動
有酸素運動は、脂肪を燃焼させるために欠かせません。最も取り組みやすい運動として、ウォーキングが推奨されます。
【ウォーキングのポイント】
- 気軽に始められる運動で、時間、強度、頻度を調整しやすい。
- 歩数計やスマートフォンの歩数計アプリを活用することで、運動量を「数値化」し、その推移を確認できます。これによりモチベーション維持にもつながります。
レジスタンス運動(筋力トレーニング)
レジスタンス運動は筋肉に負荷をかけることで、以下の効果を得られます。
- 筋肉量増加・筋力向上
- エネルギー消費効率の向上(脂肪燃焼のスピードが速くなる)
- 腰や膝への負担軽減(体重を支える筋肉を強化)
肥満の方は、すでに体重を支える筋肉がある程度発達しているため、レジスタンス運動の必要性が低い場合もあります。
ただし、筋トレに自信があり、時間や設備が整っている方は積極的に取り組むと良いでしょう。有酸素運動とレジスタンス運動の組み合わせ
有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせることで、以下の健康指標の改善が期待できます。
- 減量の促進
- HbA1cや空腹時血糖値の低下
- 血圧や中性脂肪値の改善
無理なく継続できる運動計画を立て、長期的な健康改善を目指しましょう。
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TREATMENT 03.
薬物療法
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糖尿病や脂質異常症、高血圧などの合併症がすでにある場合、それぞれに応じた薬物治療を行います。特にBMIが35以上の高度肥満症の方には、GLP-1受容体作動薬を含む薬物治療の処方を検討します。
一人ひとりの状況に応じた治療法を提案し、健康的な減量をサポートします。GLP-1受容体作動薬
(ウゴービ・オゼンピック・リベルサス・マンジャロなど)2023年11月22日、肥満症治療薬であるGLP-1受容体作動薬「ウゴービ(セマグルチド)」が薬価収載されました。薬価収載とは、厚生労働省が新薬に価格を設定し、保険診療で使用できるようにすることです。
これまでウゴービは自費診療でしか使用できませんでしたが、今後は一般的な医療機関でも使用が可能になります。
高度肥満に対する保険適応での処方は施設要件を満たす必要があるため難しいのですが、糖尿病の診断がある患者さんに対しては、適切に判断した上で「オゼンピック」や「リベルサス」、「マンジャロ」などGLP-1受容体作動薬を保険適用で処方することができます。
また、保険適応がない場合も、自由診療にはなりますが処方することが出来ます。SGLT-2阻害薬
SGLT-2阻害薬は、腎臓で糖を再吸収するたんぱく質(SGLT2)を阻害し、糖を尿中へ排泄するお薬です。
糖尿病や心不全、腎不全に対しては治療薬として保険適応があります。
薬の作用によって、1日あたり約400キロカロリーのブドウ糖が尿中へ排出されるため、ダイエット効果が期待できます。
商品名としてカナグル、スーグラ、フォシーガ、ジャディアンス、デベルザ、ルセフィ等があります。【SGLT2阻害薬を使用できない方】
- SGLT2に過敏症・アレルギーの既往のある方
- 心臓、腎臓、肝臓、膵臓に異常のある方
- 糖尿病既往や現在治療中の方
- 大きな外傷や手術を控えている方
- 妊婦、授乳中、または妊娠の可能性のある方
- 尿路感染症や性器感染症のある方
薬物療法は患者様一人ひとりの状態に応じて選択され、食事療法や運動療法と組み合わせることで、より効果的な治療が期待できます。
- 食事療法・運動療法の指導
- BMI 35以上の患者さんへの抗肥満薬治療
- 糖尿病を有する患者さんへのGLP-1製剤やSGLT-2阻害薬
これらを適切にミックスし、効果のあるダイエット治療を行います。