近年、特殊詐欺の手口がますます巧妙化し、被害が増加しています。オレオレ詐欺に端を発する特殊詐欺は、預貯金詐欺や架空請求詐欺、還付金詐欺、さらにはサポート詐欺といった形で多様化しています。
特に2023年には、特殊詐欺による被害額が400億円を超え、過去15年間で最多となる件数が報告されています。
この背景には、高齢者を狙った詐欺の効率化が関係していると考えられます。
特に、認知症を患う高齢者をターゲットにした特殊詐欺事件も多く起こっており、高齢者や認知症患者を詐欺師からどのように守るかが課題です。
特殊詐欺の進化とその背景
特殊詐欺の中で注目されるのが「サポート詐欺」です。この手口は、パソコン画面に「ウイルス感染」を装った偽警告を表示し、被害者が復旧を求める電話をかけてくるのを待つというものです。
従来のオレオレ詐欺では犯人が不特定多数に電話をかける必要がありましたが、サポート詐欺は被害者の側から接触を図るため、効率が良いとされています。
警察庁の報告によれば、こうした詐欺の背景には技術の進化だけでなく、高齢者の心理や生活環境が影響しているといいます。
特に孤独や不安を抱える高齢者は、詐欺に巻き込まれるリスクが高いと言われています。
認知症と詐欺被害の関係
一方で、認知症の診断を受けている高齢者は特殊詐欺の被害に遭いにくいという指摘があります。
特殊詐欺に引っかかるには、ある程度の理解力と行動力が必要であり、認知機能が低下している場合には対応が難しいためです。
しかし、軽度認知障害(MCI)の状態にある人や、認知機能が正常な高齢者は、詐欺被害に遭いやすい傾向があります。
例えば、オレオレ詐欺の被害に遭った高齢者が「母は認知症ではないか」と受診するケースが年間10件ほどある病院では、実際には認知症ではない場合が多いといいます。
逆に認知症の人は、訪問販売やテレビショッピングのように手続きが簡単な取引で被害に遭うことが多いとのことです。
「準詐欺」の新たな脅威
最近注目されているのが「準詐欺」と呼ばれる犯罪です。これは、認知機能が低下した高齢者をターゲットに、法的には詐欺罪に該当しない巧妙な手口で財産を搾取するものです。
ある患者さんの事例では、築43年の古いマンションの一部を高額で購入する契約をさせられました。
患者は契約の動機や詳細をあいまいにしか覚えておらず、「銀行金利が安いから儲かると思った」といった発言をする一方で、「私は何も買わない。判子を貸してくれと言われただけ」と矛盾した説明をしていました。
このようなケースでは、被害者が「判断能力が低下した状態にあった」ことを証明する必要があり、立件のハードルが高いとされています。
高齢者の孤独と詐欺被害
特殊詐欺や準詐欺の背景には、高齢者の孤独や寂しさが深く関係していると考えられます。詐欺師たちは巧みな話術で高齢者の心に入り込み、不安や期待を煽ることで取引を成立させます。
高齢者を対象とした経済犯罪を防ぐためには、社会全体で高齢者の孤立を防ぎ、コミュニケーションを促進する取り組みが必要です。
防止策と私たちにできること
高齢者を詐欺から守るために、以下のような対策が重要です。
- 教育と啓発: 特殊詐欺の手口や注意点を広く周知し、高齢者自身が警戒心を持てるようにする。
- 地域での見守り: 地域コミュニティや家族が高齢者を定期的に訪問し、孤独を減らす。
- 法的サポートの強化: 準詐欺のように立件が難しいケースにも対応できる法整備を進める。
- 技術の活用: 詐欺警告アプリや、詐欺の可能性を通知するシステムの導入を検討する。
高齢化社会が進む中で、特殊詐欺や準詐欺の被害を防ぐには、個人の注意だけでなく、社会全体のサポートが不可欠です。
孤立しがちな高齢者を守るために、私たち一人ひとりができることを考えていきましょう。
ご家族が認知症かも?と心配になった時は、当院を一度受診するよう連れてきてあげてください。
どんな些細なことでも結構ですので、お気軽にご相談ください。
