メタボリックシンドロームは、現代社会で多くの人々が抱える健康課題です。
お腹まわりの脂肪が気になる、血糖値や血圧が高めと言われた…そんな状態を放置すると、糖尿病や心筋梗塞といった深刻な病気に繋がる可能性があります。
しかし、ライフスタイルを少し見直すことで改善が期待できるのをご存じでしょうか?
そのひとつが「時間制限食」と呼ばれる新しい食事法です。
時間制限食とは?
時間制限食(Time-Restricted Eating: TRE)とは、食事をとる時間を1日の中で決められた範囲に制限する食事法です。
たとえば、朝7時から夜7時の12時間だけ食事をとり、それ以外の時間は水やお茶などカロリーのない飲み物だけにするというものです。
この方法は、カロリー制限を強いるものではなく、食事のタイミングを管理するだけというシンプルさが特徴です。
メタボリックシンドローム該当者の食事療法に時間制限食を用いることで、標準的な食事療法よりもHbA1cが有意に低下したとする研究結果が報告されました。
米ソーク生物学研究所のEmily N.C. Manoogian氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に10月1日掲載されています。
この研究では、時間制限食が血糖値や体重のコントロールに有効であることや、HbA1cが標準的な食事療法と比べて有意に低下したことが確認されています。
研究の詳細
この研究には、メタボリックシンドロームに該当する成人が参加しました。
参加者は空腹時血糖値が高い、またはHbA1cが上昇している人々で構成されており、薬物療法を受けている人も対象に含まれていました。
TRE(時間制限食)群と標準的な食事療法を受ける対照群に無作為に分けられ、3カ月間の介入が実施されました。
方法と設定
TRE群では、参加者の起床・就寝パターンに基づき、摂食可能な時間帯が設定されました。起床後1時間以内から食事を開始し、就寝3時間前には終了するように調整され、8~10時間の摂食可能時間が設けられました。
食事内容の栄養指導も行われており、参加者はスマートフォンのアプリで食事時間の記録をしています。
結果
- HbA1cの低下: TRE群では対照群に比べてHbA1cが0.10%有意に低下しました(95%信頼区間 -0.19~-0.003)。
- 体重とBMIの減少: TRE群は対照群に比べて3~4%多く体重とBMIが減少しました。
- 腹部脂肪の減少: 腹部体幹脂肪の低下が顕著で、健康改善に寄与したと考えられます。
- 筋肉量の維持: 減量時の懸念である筋肉量の低下は見られませんでした。
研究参加者に重大な有害事象は報告されませんでした。
このことから、時間制限食は安全であり、実践的な方法であると評価されました。
著者らは、「個別化された時間制限食は、メタボリックシンドローム該当者の血糖値改善や心代謝系の健康促進に寄与する可能性がある」と結論づけています。
時間制限食のメリット
時間制限食には、いくつかの健康メリットが期待されています。
- 内臓脂肪の減少
食事をする時間を制限することで、体がエネルギーを効率よく消費し、余分な脂肪を燃焼しやすくなると言われています。
- 血糖値の安定
決まった時間内に食事を済ませることで、血糖値の乱高下を防ぎ、インスリンの働きを改善する可能性があります。
特に、HbA1cの低下が認められた研究結果から、時間制限食が糖尿病予防にも役立つと期待されています。
- 生活リズムの改善
食事の時間を固定することで、自然と睡眠や日中の活動時間が規則的になり、生活リズムが整う効果も期待できます。
- 心代謝健康の向上
腹部脂肪やBMIの低下が見られるだけでなく、筋肉量を維持したまま減量が可能であることが示されています。
実際に取り組む方法
では、どのように時間制限食を取り入れれば良いのでしょうか?
- スタートは8時間ルールから
まずは、1日のうち8時間以内で食事を済ませるルールを試してみましょう。たとえば、朝9時から夕方5時までの間に朝食・昼食・軽い夕食をとります。
これにより、16時間は食事をしない時間(空腹時間)が確保されます。
- 無理のない範囲で調整
毎日厳密に時間を守る必要はありません。
友人や家族との外食時はルールを少し緩めるなど、無理のない範囲で続けることが大切です。
研究の中でも、個人の生活パターンに合わせた柔軟な運用が推奨されています。
- 水分補給を忘れずに
食事をしない時間も水分補給はしっかり行いましょう。
特に、水やお茶などのカロリーゼロの飲み物を摂取することで、空腹感をやわらげる効果があります。
注意点
時間制限食はシンプルな方法ですが、いくつか注意すべき点もあります。
- 過食に注意 食事の時間内だからといって、高カロリーのものをたくさん食べてしまうと効果が半減します。バランスの良い食事を心がけましょう。
- 持病がある場合は医師に相談 糖尿病や腎臓病など、特定の持病がある方は、時間制限食が適していない場合もあります。必ず医師に相談してください。
- 無理をしない 初めて挑戦する場合は、短い空腹時間から始めて、徐々に慣れていくのがおすすめです。
まとめ
時間制限食は、食事のタイミングを管理するだけで、健康改善を目指せる食事法です。
特にメタボリックシンドロームの改善を目指す方にとって、負担が少なく続けやすい方法として注目されています。
研究結果からも、血糖値や体重、腹部脂肪の減少に効果があることが確認されています。
健康診断で気になる結果が出た方や、生活習慣を見直したいと考えている方は、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか?
無理なく続けて、健康的な毎日を手に入れましょう!
【引用文献】
Annals of internal medicine. 2024 Nov;177(11);1462-1470.
メタボリックシンドロームの成人における時間制限食:ランダム化比較試験
Time-Restricted Eating in Adults With Metabolic Syndrome : A Randomized Controlled Trial.