認知症とは
認知症は、加齢に伴い脳の神経細胞が減少し、記憶や判断力が低下して日常生活に支障をきたす病気です。
根本的な治療薬は限られているため、早期発見と発症を遅らせるための生活習慣の改善が重要視されています。
放置すれば進行し、介護が必要となる可能性が高まります。今回、毎日の食事で「特定の色の野菜」を摂ることが、将来の認知症リスク低下に関連するという興味深い研究結果が発表されました。
この研究は、エディスコーワン大学の研究グループによって行われ、詳細は2024年10月28日付の『Food & function』に掲載されています。
長期間にわたる食事と健康の追跡調査
この研究は、オーストラリアに住む70歳以上の高齢女性約1,200人を対象に行われました。
研究開始時に「普段どのような野菜をどのくらい食べているか」を詳しく調査し、その後約14年半という長い期間にわたり健康状態を追跡しました。
研究チームは、野菜の種類ごとの摂取量と、その後の認知症の発症や、認知症に関連する入院・死亡リスクとの間にどのような関係があるのかを統計的に分析しました。
黄・赤色野菜とネギ類に注目
調査の結果、野菜全体の摂取量が多い人は、少ない人に比べて認知症に関連する死亡リスクが低下する傾向が見られました。
特に際立っていたのは、ニンジンやトマトなどの「黄色・オレンジ・赤色の野菜」を多く食べていたグループで、最も少ないグループに比べ認知症の発症リスクが約5割(47%)低いという結果が出ました。
また、タマネギやニンニクなどの「ネギ類」を多く摂るグループでも、リスクが約4割低下する関連性が確認されました。
食卓の「彩り」が脳を守る鍵に
この結果は、高齢期において単に野菜を食べるだけでなく、「野菜の種類」を意識することが認知症予防に役立つ可能性を示唆しています。特に赤や黄色の色素成分や、ネギ類に含まれる成分が、脳の健康維持にプラスに働く可能性があり、日々の食卓に彩りを加えることが重要と言えます。
暮らしへのヒント:今日からできる食の工夫
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赤・黄色の野菜をプラスする トマト、ニンジン、パプリカなど、彩り豊かな野菜を意識的にメニューに加え、見た目も鮮やかにしましょう。
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薬味野菜を味方に タマネギ、長ネギ、ニンニクなどのネギ類は、炒め物やスープの旨味出しとして手軽に活用できます。
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緑の野菜もバランスよく 今回の結果では赤・黄色が目立ちましたが、ホウレンソウなどの緑黄色野菜も健康の土台として大切にしましょう。
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「ちょい足し」から始める いきなり大量に食べるのではなく、いつもの食事に小鉢を一つ増やすなど、無理のない範囲で継続することが大切です。
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特定のものに偏らない 一つの食材だけを過信せず、様々な種類の野菜を組み合わせて食べることで、相乗効果を期待しましょう。
まとめ
今回の研究から、日々の食事で彩り豊かな野菜を選ぶことが、将来の認知症リスクを遠ざける一助となる可能性が示されました。
もちろん食事だけで全て防げるわけではありませんが、食生活の見直しは今日からできる有効な対策の一つです。
もし物忘れなど気になる症状がある場合は、早めに当院の認知症外来へご相談ください。
【引用】
特定の種類の野菜は、老年期の認知症の長期リスクの低下と関連している:高齢女性を対象としたパース縦断研究
Ghasemifard N, et al. Specific vegetable types are associated with lower long-term risk for late-life dementia: the Perth Longitudinal Study of Aging Women. Food & function, 2024, 15, 21, p.10885-10895. (オンライン).
